10年。震災。伝承の会。

東日本大震災から10年の節目3月11日に、「講談師27名による 伝承の会」の中日でございました。お運び頂きまして、誠にありがとうございました。ちょうど私の頂いた出番の最中に地震の発生した14:46を迎えました。

高座前に黙とうのアナウンスがあり、お客様と楽屋一同、黙とうをしましてからの高座。

 

 

年一回の「伝承の会」も、今回が10年目でした。これまで私は、10回のうち半分くらいの参加率です。

 

「伝承」とは難しいもので、流派を越えて教わりに行って会得できるかというと、基礎からして流派によって考え方が異なるので、簡単にはいかないと思います。私が二つ目になりたての頃に「伝承の会」が始まりましたが、「師匠、大師匠からのものさえ満足にできないのに」と数年はご遠慮し。

 

ようやくおそるおそる師匠の琴星に伺いを立てて、許しが出たのが、師匠の妹弟子にあたる宝井琴嶺先生のところでした。

会のコンセプトからすると他派での稽古が望まれるのでしょうが、お認め頂け、いざ教わると、琴星と師匠が同じでも、かくなるまでに違うのか、というくらい、講談に対する考え方や教え方の違いがありました。

 

次に師匠から許しが出たのが、神田翠月先生のところでした。また違いました。翠月先生の講談の捉え方は、宝井派とは

180度、真逆と言ってもよいくらい違います。これまでダメだと教わってきたものがOKで、良しとされてきたものがNGとなる。大混乱!・・・と感じたのは私の技量だから。

 

 

不出来と、まずまず、の高座を繰り返し、まずまずの出来だった時に、よほどホッとされたのでしょう、翠月先生が「あたし嬉しくって!」と全身で喜びを表現して駆け寄って下さった。

 

琴嶺先生から教わった源平物の数話も、翠月先生から教わった世話物の数話も、時間をかけて育てていくうちに、お客様から好評頂けたり、演目指定で高座の機会を頂けるようになりました。

 

今回初めて一龍斎貞山先生にお願いしました。一龍斎の旗下に入っては一年生ですから、前座として習うような気持ちで武芸物をリクエストし、先生が選んで下さった「柳生二蓋笠」を教えて頂きました。

 

 

宝井派にも沢山の良い演目が伝わっています。各門弟が沢山いれば、それらが自然に伝承されていったのでしょうが、現代では、ネタだけでも生き残ってほしいと願う様相。本当に、私のところでは、六代目馬琴と琴星の持ちネタだけでも大渋滞。

それに、うちの師匠は、「新作ネタ、まだまだ書きたいものがいっぱいある!沢山残したい!」と、毎年どんどん増え続けています・・・。

 

そういうわけで、「伝承」は一筋縄ではいきませんが・・・。頂いたものは大切に生かしていこうと思います!